ハタネズミJapanese Field Vole(Microtus montebelli)における内因性尿素の体内利用

ハタネズミをN含量の異なる3種類の飼料区:モルモット,ウサギ用固形飼料区,CP22.3%(A),ルーサン•ヘイキューブ区,CP17.2%(B),オーチャード乾草,CP12.7%+ジャガイモ区,CP1.9%(C)で飼育して内因性尿素利用の可能性を追求した.ハタネズミの腹腔内へ15N尿素を注入して,24時間当りの15Nの尿中排泄量,前胃および盲腸内容物への15Nの出現,肝蛋白質への15Nの取り込みについて調べた.血漿尿素濃度はA,B,Cでそれぞれ36.1,33.4,20.2mgN/dlであり,尿中N排泄量はCでA,Bと比べて約3分の1に低下していた.尿中15N排泄率は,A,Bの64.1,62.9%と比較してCでは47.0%で尿素の排泄が抑制され消化管で利用される可能性が示唆された.前胃内容の15N Atom% excess は,A,B,Cで0.479,0.239,0.378であり,盲腸内容のそれは0.215,0.215,0.569であり,かなりの15Nが消化管へ出現してくることが示された.前胃への15Nの出現総量はA,B,Cで8.78,3.45,10.76μg15N,盲腸のそれは30.51,28.25,96.93μg15Nで,Cの出現量が著しく高く,又盲腸への出現量が前胃と比較して極端に高かった.肝蛋白質への15Nの取り込みは,A,B,Cで0.043,0.049,0.166 Atom% excessであり,尿素再循環による体内N利用の存在が証明された.以上の結果から,ハタネズミにおいて尿素再循環機構は,栄養生理学上重要であり,血液尿素の消化管出現の場としては,盲腸が最も重要であることが証明された.